グノー/ホルン作品

ピストン・ホルンのための6つのメロディ(全6曲)/アドリアン・ディアス・マルティネス(2021)
CD(C2 Hamburg ES 2086)

手書き/ホルンとピアノのための作品集
1.シューマン/アダージョとアレグロ変イ長調Op70
2.グノー/ピストン・ホルンのための6つのメロデ
3.R・シュトラウス/ホルン協奏曲第2番変ホ長調
      〜ホルンと2台のピアノ版
4.キルヒナー/3つの詩〜ホルンとピアノのための

 アドリアン・ディアス・マルティネス(ホルン)
 小田井 郁子(ピアノ)(1〜4)
 ウルリケ・パイヤー(ピアノ)(3)
 録音 2021年5月29、30日&6月5〜7日
 ハンブルク、ロルフ・リーバーマン・スタジオ

 アドリアン・ディアス・マルティネスはスペイン出身のホルン奏者です。ドイツでマリー=ルイーズ・ノイネッカーに師事しました。ドイツのNDRエルプ・フィルハーモニーのホルン奏者です。バイロイト祝祭管弦楽団のメンバーもつとめています。ここでは、聴きなれた作品の初稿手書きの楽譜を探しての録音です。シューマンだけは手書きを入手していました。
 シューマンの「アダージョとアレグロ変イ長調」は初稿では「ロマンスとアレグロ」になっていました。第1楽章のアダージョはロマンスで、聴きなれたアダージョが急に聴きなれない音形になったり、聴いたことないフレーズが入ったりして驚きますが、やはりシューマンのアダージョには違いありません。きれいな演奏です。第2楽章のアレグロは冒頭に快適な音形が聴かれますが、ここでも聴きなれたフレーズが入ってなかったり、違う音になったりします。全体としてはほとんど変わりはないのですが、急にフレーズが入らなかったり違うフレーズになりますので演奏は大変だったと思います。それでも、世界初録音といえるこの演奏は価値のあるものです。素晴らしい演奏です。
 グノーの「ピストン・ホルンのための6つのメロディ」は1839年の初版楽譜による演奏です。第1曲「ラルゲット」、第2曲「アンダンティーノ」、第3曲「アンダンテ」、第4曲「ラルゲット」、第5曲「アンダンテ・カンタービレ」、第6曲「アンダンテ・ソステヌート」からなる組曲ですが、すべて穏やかなテンポの穏やかなメロディーが聴かれます。なお、この初版では第6曲が「アンダンテ・ベン・マルカート」になっていました。マルティネスのホルンはきれいな演奏です。
 R・シュトラウスの「ホルン協奏曲第2番」は自筆譜のコピーがあったようです。これはピアノ伴奏ですが、2台のピアノになるところもあります。第1楽章は冒頭の主題からちょっと違う音形が入ります。聴きなれたホルン協奏曲第2番との違いを聴くのも面白いです。展開部にもちょっと違う音が聴かれます。再現部にも微妙な違いはありますが、やはりシュトラウスのホルン協奏曲です。第2楽章はピアノの長い前奏のあとにホルンのソロが入ります。最後のフレーズに微妙な違いがあります。第3楽章は自然に聞こえますが、中間部に微妙に音形の違うところがあります。コーダの演奏は見事です。良い演奏です。
 キルヒナーの「3つの詩(ポエム)」は1987年に師のマリー=ルイーズ・ノイネッカーのために書かれた作品です。第1曲「オルフェオの嘆き」、第2曲「オルフェオの踊り」、第3曲「葬送のゴンドラ」になります。この作品はオリジナルですが、マルティネスは新しい音色などに気をつかったようです。第2曲では小田井郁子のピアノも素晴らしい響きです。ホルンも元気な演奏です。第3曲は葬送の音楽ですから、哀愁的な響きになります。ゲシュトップ奏法を使うので独特な響きがあります。これは見事な演奏です。アルバムとしても記念すべき録音です。


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