スクリャービン/ロマンス

リチャード・ワトキンス(2018)
CD(Signum CLASSICS SIGCD556)

ロマンティック・ホルン
1.ベートーヴェン/ホルン・ソナタ ヘ長調Op17
2.F・シュトラウス/夜想曲Op7
3.R・シュトラウス/アンダンテ ハ長調
4.シューマン/アダージョとアレグロOp70
5.グラズノフ/夢Op24
6.スクリャービン/ロマンス
7.デュカス/ヴィラネル
8.プーランク/エレジー〜デニス・ブレインの思い出に
9.ギルバート・ヴィンター/
      「ハンターズ・ムーン(狩人の月)」

 リチャード・ワトキンス(ホルン)
 ジュリアス・ドレイク(ピアノ)
 録音 2018年3月22〜24日

 リチャード・ワトキンス待望のソロ・アルバムです。ホルンの名曲、定番作品の録音です。
 ベートーヴェンのホルン・ソナタはデニス・ブレインの録音で知られる名曲で、同じイギリス出身のワトキンスとしては新たな解釈でこの名曲に挑んでいます。第1楽章の展開部の哀愁的な響きの素晴らしさ、そして勢いのある演奏は素晴らしいです。第2楽章の歌い方も実に見事です。第3楽章からはピアノの響きがベートーヴェンらしく迫力があります。ホルンは力強く響きます。2度3度聴いているうちにワトキンスの美しいホルンの響きに心が打たれます。
 フランツ・シュトラウスの夜想曲(ノクターン)はこれも名曲です。穏やかに始まるこの作品は高音から低音まで使う演奏の難しい曲ですが、ワトキンスの滑らかな演奏は見事です。コーダの低音もよく響きます。
 リヒャルト・シュトラウスの「アンダンテ」は24歳のときの作品です。ホルン協奏曲とはまた違う魅力があります。このホルンによる歌は聴く者の心を打つ素晴らしさがあります。
 シューマンの「アダージョとアレグロ」もデニス・ブレインの演奏で一躍有名になった作品です。穏やかなアダージョと気迫に満ちたアレグロが聴きどころ。ワトキンスのホルンが見事に歌っています。
 グラズノフの「夢」は小品ながらもピアノとホルンが作り出すその美しい音楽には泣かされます。オーブリー・ブレインが録音して以来人気の高い作品です。
 スクリャービンの「ロマンス」はホルンとピアノのために書かれた作品で、貴重なホルンのレパートリーの1つです。ロシアの民謡風の小品ながら美しい主題が歌われます。
 デュカスの「ヴィラネル」はこれもデニス・ブレインの録音で一躍有名になりました。前半には自然倍音で演奏という指定もあるのですがワトキンスはバルブ使用で演奏しています。滑らかな演奏で、中間の主題も美しい響きです。このようなヴィラネルもまたいいと思います。
 プーランクの「エレジー〜デニス・ブレインの思い出に」は名曲で、1957年に事故死した名ホルン奏者デニス・ブレインを偲んで作曲されました。冒頭にブレインの激しい動きの主題、そして衝突を思わせるグリッサンドがあります。あとは哀歌としての長い葬送の音楽になります。ワトキンスのホルンには悲しみさえ感じられます。
 ギルバート・ヴィンターの「ハンターズ・ムーン(狩人の月)」はイギリスの作曲家によるものでブレインも愛奏したらしく、静と動が入り混じる名作です。ゲシュトップの効果もあります。ワトキンスはこの作品を2000年に録音していました。この演奏もピアノ共々素晴らしいものになりました。


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