シニガリアのホルン作品

モレスケOp28−2/高橋 朋子(2009)
CD(AMD HR-90725)

7人のホルン奏者によるソロ曲集
1.F・シュトラウス/オリジナル・ファンタジーOp6
  大内 加奈(ホルン)林 浩子(ピアノ)
2.ボザ/遥かなる歌
  渡部奈津子(ホルン)山本佳世子(ピアノ)
3.サン=サーンス/ロマンス ホ長調Op67
  玉田亜沙美(ホルン)島崎佐智代(ピアノ)
4.アニシモフ/ポエム
  鈴木 希恵(ホルン)遠藤 直子(ピアノ)
5.シニガリア/フモレスケOp28-2
  高橋 朋子(ホルン)神永 睦子(ピアノ)
6.F・シュトラウス/主題と変奏Op13
  上里 友二(ホルン)大堀 節子(ピアノ)
7.スタイガー&クラーク/ヴェニスの謝肉祭
  福川 伸陽(ホルン)
  大堀晴津子(ピアノ)

  録音 2009年1月15日
    ゆめりあホール

 日本の若手ホルン奏者を紹介する企画のアルバムです。現在N響で活躍する福川をはじめ将来を嘱望される演奏家それぞれの音色の違いがわかり面白いです。また録音のほとんどない作品も含まれており貴重なアルバムといえます。
 フランツ・シュトラウスの「オリジナル・ファンタジー」を吹いている大内加奈は武蔵野音大卒、伊藤泰世、久永重明、丸山 勉、山本 真の各氏の師事、フリーランスで活動の様子。音色は大変きれいで甘い音色を大切に吹いています。細かいフレーズも滑らかに吹くところは素晴らしく大変良い演奏です。
 ボザの「遥かなる歌」を吹く渡部奈津子は洗足学園音大卒、樋口哲生、山岸博、日高剛氏らに師事、現在広島交響楽団、ホルン・アンサンブル・ヴィーナスのメンバー。「遥かなる歌」は「森にて」「山の頂で」同様ボザのホルン作品ですが、録音はほとんど見当たりませんので嬉しい録音です。ボザ独特の作品ですが後半にワーグナーのジークフリートの動機や「田園」の牧人の歌を思わせるフレーズがあります。力強いホルンでした。
 サン=サーンスのロマンスを吹く玉田亜沙美は尚美ミュージック・カレッジ卒、下田太郎、井出詩朗、樽井正幸氏らに師事。ロマンス作品67は作品36よりも難しい曲ですが、滑らかなホルンでやわらかな響きは素晴らしくこの難曲を見事に吹き上げています。
 アニシモフのポエムを吹いている鈴木希恵は桐朋学園大学卒、宮田四郎、樋口哲生、猶井正幸、竹村淳司の各氏に師事、現在シンフォニエッタ静岡のホルン奏者。アニシモフのポエムは度々演奏される曲ですが、録音は少なく池田重一、山本昭一に次ぐ録音のようです。ロシアの作品で優しさと力強さが欲しい作品です。彼女のホルンは力強さがあり見事な演奏です。
 シニガリアのフモレスケを吹く高橋朋子は洗足学園音大卒、山岸博、西條貴人、イルジ・ハヴリークの各氏に師事、フリーランスで活動中。シニガリアの作品は録音が少なくフモレスケはフロイディス・リー・ヴェクレとバロンチーニの録音があるくらいです。細かいフレーズが続きますので小品ながら演奏は難しいでしょう。タンギングの巧みなホルンでスラーの滑らかな演奏もまた素晴らしい。
 フランツ・シュトラウスの主題と変奏を吹く上里友二は東京音大卒、三宅知次、守山光三、今井仁志の各氏に指示、ズーラシアン・ブラス及びシエナ・ウィンド・オーケストラのホルン奏者。主題と変奏はフランツの作品でもノクターンに次いで人気のある曲です。変奏曲の演奏はロッシーニのように難しいですが上里の演奏は素晴らしく聞いていて気持ちよいものです。
 最後の福川伸陽は2008年の日本音楽コンクールで優勝した名手で2013年からN響メンバーです。この「ヴェニスの謝肉祭」はトランペットのための作品でトランペット奏者デル・スタイガーとコルネット奏者ハーバート・クラークの共作のようです。冒頭からホルンで吹いているとは信じられないほどの超絶技巧の演奏が響きます。低音から高音まで使うこの作品はフルートやトランペットでも超絶技巧を要する同名作品の中でもダントツきつい作品です。最後の分散和音の難しさは大変なものです。その演奏の正確さは絶品です。このアルバムでは他を圧倒する超名演です。


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