アンサンブル

ホルン・ソロ&室内楽作品集/ザール・ベルガー

CD(Ensemble Modern EMCD-026/27) 

CD1 ホルン・ソロ作品集
1.ハインツ・ホリガー/激情−夢 
2.ミロスラフ・スルンカ/コロニー 
3.藤倉 大/ぽよぽよ
4.イェルク・ヴィトマン/アリア
5.ニーナ・シェンク/ひとつの歌
6.ヴァソス・ニコラウ/L.E.A.P.S
7.マヤ・ドゥニエツ/フィガロの夢 
8.デーモン・トーマス・リー/ベント
9.今井 千景/ドローイング 
10.ディトマー・ヴィースナー/テープつきの歌

CD2 室内楽作品集
11.トマス・アデス/狩のソナタ
12.ザミール・オデー=タミーミ/ホルンと
     パーカッションのためのデュオ 
13.キャシー・ミリケン/3つのステップ 
14.ヴィト・ジュラーイ/ウォーム・アップ 
15.ホーコン・テリン/夢の旋律
16.アンソニー・チャン/ホルン管弦楽のための
          「霧のモビール」
17.ヴァレンティン・ガーヴィー/金管四重奏曲
    「レッツ・コール・ディスによる変奏曲」

  ザール・ベルガー(ホルン)(1〜17)
  マヤ・ドゥニエツ(ピアノ)(7)
  クリスティアン・ホンメル(オーボエ)(11)
  ウエリ・ヴィゲト(チェンバロ)(11)
  ライナー・レーマー(パーカッション)(12)
  ジャグディシュ・ミストリー(ヴァイオリン)(13)
  エヴァ・ベッカー(チェロ)(13)
  小川 留美(パーカッション)(14)
  デイヴィッド・ハラー(パーカッション)(14)
  ホーコン・テリン(コントラバス)(15)
  マティアス・ピンチャー指揮
  フランクフルト放送交響楽団(16)
  ヴァレンティン・ガーヴィー(トランペット)(17)
  サヴァ・スイトヤノフ(トランペット)(17)
  ウーヴェ・ディエルクセン(トロンボーン)(17)
  録音 2010年2月〜2012年10月

  ザール・ベルガーはイスラエルのホルン奏者でエルサレム音楽院で学んだのちドイツに渡り、ミヒャエル・ヘルツェルとノイネッカーに師事。のちにペンツェルやエサ・タパニにも学んでいます。1枚目のアルバムでは独奏ホルンの作品が演奏されています。
 ハインツ・ホリガーの「激情−夢」は2001年の作で2004年に改訂されオリヴィエ・ダルブレが初演しています。ホルンで激しい感情、怒りを表現するというのは難しいことですが、まさにイライラ状態を音にしたこの作品は凄いです。演奏もまた凄いとしかいえません。途中で一声「ヨー」と入るのは面白いです。全曲にわたり多彩なテクニックを要求され重音奏法も使う難曲です。
 ミロスラフ・スルンカ(1975〜)の「コロニー」は2009年の作品、これもあらゆるテクニックを要求される作品で低音は重音になりグリッサンドは上昇下降の連続という9分を超える難曲です。
 藤倉 大(1977〜)の「ぽよぽよ」は2012年の作品。赤ちゃんのほっぺのふわふわ感を音楽にした傑作です。福川伸陽が2013年に録音していますがこのベルガーの録音は2012年の録音で世界初録音です。ワンワンミュートの使い方が絶妙です。
 イェルク・ヴィトマン(1973〜)の「アリア」は2005年の作品。冒頭から朗々としたホルンが響きます。このホルンは自然倍音を吹いていてナチュラルホルンを吹いているように聞こえます。後半の叫ぶようなホルンは見事です。
 ニーナ・シェンク(1982〜)の「ひとつの歌」は2012年の作品。低音から始まりやがて中高音も使うのですが長音フレーズの連続でホールトーンを楽しむかのような作品です。後半になると細かいリズムのフレーズが入ります。最後はハイトーンで終わります。
 ヴァソス・ニコラウ(1971〜)はキプロスの作曲家、「L.E.A.P.S(Lung Emerging Anticipatory Post Scriptum)」は2012年の作品。跳躍するようなホルンのフレーズが続く5分ほどの小品です。音程のとり方はかなり難しいと思われます。
 マヤ・ドゥニエツ(1981〜)はイスラエルの作曲家、ホルンとピアノのための「フィガロの夢」は2012年の作品。注目はホルンよりもピアノで明らかにピアノ弦をたたいたり弾く(はじく)音がします。またホルン奏者はホルンを吹くだけでなく声を出すところがあります。またピアノはばちで叩く音が聞こえます。面白い作品です。
 デーモン・トーマス・リー(1975〜)の「ベント」は2008年の作品。ソロ・ホルンで細かく跳躍する忙しい作品で、ゲシュトップやフラッタータンギングも使い、音とはいえない「プッ!」という息の吹き出し、また「イー」という声が突然入るところは聞き逃せないでしょう。「ベント」という表題が納得できます。
 今井 千景(1979〜)の「ドローイング(Drawing)」は2012年の作品。絵画なら素描ですが、ホルンで素描という表現は面白く、スタッカートするホルンはまるでペンを立てて書いているかのようです。低音の重音、そして吹き込む息の音はペンで紙をこするようなそんな想像力を書きたてる面白い作品です。
 ディトマー・ヴィースナー(1955〜)の「テープつきの歌」は2008年の作品。冒頭の低音の響きと続いて入るナレーションはベルガーの声のようです。またこの録音は多重録音で、和音が響くところがなんともいえません。低音は重音奏法でこれも多重録音の面白さがあります。声を出したりホルンを吹いたり忙しい作品で低音は必ず重音になります。
 トマス・アデス(1971〜)はイギリスの作曲家、「狩のソナタ」は1993年の作品で編成はオーボエ、ホルンとチェンバロによって演奏されます。バロックのような編成でありながら現代的な響きがあります。逆にチェンバロの響きが斬新に聞こえます。4つの楽章で構成されています。
 ザミール・オデー=タミーミ(1970〜)の「ホルンとパーカッションのためのデュオ」は2011年の作品。ホルンの多彩な音色と打楽器のコラボレーションは実に面白いです。演奏は困難を極めるでしょう。パーカッションは何を叩いているかを想像するのも面白いです。ホルンはミュートまたはハンドストップを多用していますのでホルンらしい音が聞こえないというところが特徴の作品です。
 キャシー・ミリケンの「3つのステップ」は2010年の作品。編成はヴァイオリン、チェロとホルンの三重奏です。 低い音から始まりしばらくしてようやくホルンらしい音が聞こえると弦楽器が加わり三重奏になります。とはいっても同じようなフレーズを互いに演奏するなど和声というよりも音の出し比べという感があります。しかしながら息の合う演奏は緊張感のある凄い演奏といって間違いないでしょう。穏やかそうな序奏と緊張感のある中間部、そして3人が連れ添うように語り合う難しい後半の3つのステップがあります。終結は穏やかに静かに終わります。
 ヴィト・ジュラーイ(1979〜)の「ウォーム・アップ」は2012年の作。ホルンのウォーミング・アップにしてはあまりに難しいテクニックを要する作品です。ホルンとパーカッションによる音楽ですが、パーカッションは鐘やベルのような音が響きますので独特の響きになっています。ホルンは多彩な音色で吹き通しています。後半に太鼓が入ってきますが、ホルンの音色の変化も驚きです。
 ホーコン・テリン(1976〜)の「夢の旋律」は2012年の作品。この作品はホルンとコントラバスのデュオで、冒頭からコントラバスのピツィカートが響きます。ホルンはレガートで主題を吹くところは弦楽器とのデュオらしいところです。コントラバスの重低音が素晴らしい響きです。
 アンソニー・チャン(1982〜)のホルン管弦楽のための「霧のモビール」は2010年作品で、このアルバムで唯一のホルン協奏曲です。大オーケストラとホルンが作り出す壮大な響きがあります。打楽器が多く使われています。その中でホルンががんばるのは大変なことでしょう。
 アルバムの最後、ヴァレンティン・ガーヴィー(1973〜)の金管四重奏曲「レッツ・コール・ディスによる変奏曲」はジャズセッションといってもよいでしょう。ホルンがジャズホルンになっています。スイングするところは楽しそうです。


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