シューベルト/八重奏曲

ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(1990)
CD(EMI TOCE-7448)

シューベルト/八重奏曲ヘ長調Op166、D803
   〜2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、
    コントラバス、クラリネット、ホルンと
    ファゴットのための

  ケルビーニ四重奏団
  クリストフ・ポッペン(ヴァイオリン)
  ハラルド・ショーネヴェーク(ヴァイオリン)
  ハリオルフ・シュリヒティヒ(ヴィオラ)
  マヌエル・フィッシャー=ディースカウ(チェロ)
  河原 泰則(コントラバス)
  ヴォルフガング・マイヤー(クラリネット)
  ダグ・イェンゼン(ファゴット)
  ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(ホルン)
  録音1990年4月6〜8日

 ドイツのケルビーニ四重奏団を中心としたメンバーによるシューベルトの八重奏曲です。チェロのマヌエルは名テノールディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの子息です。 
 シューベルトの八重奏曲は演奏に1時間以上もかかるる大曲で室内アンサンブルのための交響曲といえます。1824年に書かれており「未完成」と「ザ・グレート」の間になります。シューベルトはホルンを大切にした曲が多いのですが、この曲にも重要なメロディーを吹かせています。
 第1楽章は前奏のアダージョから緊張感漂う演奏です。続くアレグロでは整然としたアンサンブルが聞かれます。ヴァイオリンとクラリネットが気迫に満ちた演奏をしています。続くヴラトコヴィチのホルンも滑らかで素晴らしい響きを出しています。展開部は緻密なアンサンブルで素晴らしい演奏です。この楽章では同じ音型が楽器を変えてなんども繰り返されます。再現部はファゴットに始まって主題が各楽器に受け継がれながらホルンのソロが高らかに歌われて終わります。第2楽章:アダージョはマイヤーのクラリネットで始まる穏やかな雰囲気がきれいです。ヴァイオリンのソロ、クラリネットとファゴットのユニゾーンの美しい響きは格別です。中間部ではヴラトコヴィチのホルンのソロが素晴らしい響きで歌われますが、ヴァイオリンとの対話もまた大変よい響きです。チェロの深い響きもまた聴きものです。ファゴットの響きも感動的で、大変美しいアダージョです。コーダのコントラバスのピツィカートは大変よく響きます。
 第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェは快活なスケルツォです。勢いのある演奏は小さなオーケストラのようです。マイヤーのクラリネットがきれいです。弦楽のアンサンブルが素晴らしいです。ホルンが良い響きを出しています。第4楽章:アンダンテは主題と7つの変奏曲、シューベルトの歌劇「サラマンカの友人」から使われた主題に始まります。クラリネットとヴァイオリンが良い響きで演奏しています。第1変奏のファゴットとホルンの絡みが大変きれいです。ヴラトコヴィチの吹くホルンの第3変奏は朗々として大変よい響きです。絡むヴァイオリンもきれいです。続くチェロの第4変奏も良い響きを出しています。ヴァイオリンとクラリネットが対話しています。第5変奏は勢いがあり緊張感も感じられます。第7変奏の管楽器の響きの良さはテンポが遅めなので素晴らしいです。変化に富んだ7つの変奏曲は名作といえましょう。
 第5楽章:メヌエットはこの曲の中でも最も美しいといえる楽章です。クラリネットが歌う哀愁的な主題が弦楽器、ホルンに受け継がれていきます。ホルンが大変良く響きます。弦楽も優雅な響きのメヌエットです。トリオのファゴットもきれいです。第6楽章:アンダンテ・モルト〜アレグロはシューベルトの音楽の美しさがあります。劇的な前奏に続くアレグロはオーケストラのような素晴らしいアンサンブルでまとめています。大変良い響きを出しています。これは素晴らしいアンサンブルです。絶賛したいです。
演奏時間65分11秒。


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