ダマーズのホルン作品

子守歌/デヴィッド・クーパー(2007)
CD(David Cooper 自主制作)

1.マドセン/ホルン・ソナタOp24
2.ダマーズ/子守歌
3.シューマン/アダージョとアレグロOp70
4.R・シュトラウス/アンダンテ
5.ヒンデミット/ホルン・ソナタ変ホ長調
6.ロッシーニ/前奏曲、主題と変奏曲
9.デュカス/ヴィラネル
10.ボザ/森にてOp40

 デヴィッド・クーパー(ホルン)
 カリー・チャウ(ピアノ)
 録音2007年12月10〜13日

 デヴィッド・クーパーはアメリカのホルン奏者。16歳でエリック・ラスクに教えを受け、カーティス音楽院で学び、2011年からダラス交響楽団のホルン奏者。2017年にはベルリン・フィルの首席奏者、2019年からシカゴ交響楽団の首席奏者になります。
 マドセンの「ホルン・ソナタ」は1978年の作で、3つの楽章で構成されておりホルンとピアノのぶつかりあいのような作品です。ピアノパートの劇的な表現はまるでシューベルトの歌曲のようです。ホルンの主題の美しさもまた格別で素晴らしい作品です。第2楽章は抒情的な主題がホルンで歌われます。なんともいえない美しさがあります。第3楽章:モデラートのピアノは歌曲のようです。ホルンのカンタービレは素晴らしい響きです。「エ・ポコ・ルバート」からはまた雰囲気が変わります。名曲名演です。
 ダマーズの「子守歌」は穏やかな作品です。ホルンで歌うのは気持ちよさそうです。
 シューマンの「アダージョとアレグロ」はホルンの定番作品です。アダージョのクーパーのホルンは透明感があり実に美しい響きです。滑らかなスラーが素晴らしい。アレグロは力強い響きと卓越したホルンのテクニックが素晴らしいです。これぞホルンといえそうなホルンが聴かれます。
 リヒャルト・シュトラウスの「アンダンテ」は24歳のときの作品です。ホルン・ソナタにはなりませんでしたが、このホルンによる歌は大変感動的です。クーパーの表現力が素晴らしい。
 ヒンデミットの「ホルン・ソナタ変ホ長調」は「アルトホルンのためのソナタ」です。クーパーはホルンで吹いています。こちらも安定した響きで申し分ないものです。4つの楽章で構成されています。第2楽章の明るい響き、第3楽章の哀愁的な主題の表現力は見事なものです。第4楽章の前に「ポストホルン」と題した対話が挿入されています。第4楽章冒頭のピアノの響きとホルンの美しい響きが感動的です。
 ロッシーニの「前奏曲、主題と変奏曲」は名曲で録音が多い作品です。この作品は前奏曲を美しい響きで歌い、主題と変奏曲では持ち前のテクニックを駆使して演奏することになります。第1変奏、第2変奏と難易度がきつくなりますがクーパーのホルンは見事な演奏です。ここではピアニストの表現力もまた聴きものです。第3変奏の美しさ、第4変奏の見事な演奏は絶品。
  デュカスの「ヴィラネル」はホルンの定番中の定番。前半を自然倍音で演奏するのが指定ですが、クーパーはバルブを使って吹いています。ピアノはここでも見事な演奏でホルンと共に名演奏を繰り広げます。後半のうまさはミュートを付けても見事なもので終結の鮮やかさも素晴らしい。
  最後の曲ボザの「森にて」は「ヴィラネル」と同様パリ音楽院の卒業試験の課題曲でした。狩のホルンを思わせるもので森のホルン、こだま、遠近感と多彩な表現が要求されるだけにこの曲は最後を飾るにふさわしいです。ピアノもホルンも良い響きで雄大さと迫力を感じさせる名演です。絶賛したいアルバムです。


トップへ
戻る
前へ
次へ